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先輩後輩(4)/日吉先輩と新入生

2011.04.27.Wed.22:43
 日吉は確か報道委員。一学年上がったら同じ委員会じゃないかもしれないんですけど、まあその辺は目を瞑りましょう。そんなわけで今年も日吉は報道委員。

 新入生は、報道委員に配属されます。報道委員……。なにやら凄い響きです。報道。報道ですからね。その響きから、超スクープをゲットしなくてはいけないような気になってくる新入生。戦場カメラマンもかくやという活躍をしなくてはと意気込み、委員長の日吉先輩に「頑張ります!」なんてドキドキしながらそう言うと、日吉先輩は顔をクッと逸らし、口もとをニタリと歪ませました。別に日吉としては馬鹿にしたわけじゃなく、『暑苦しい奴だな』と苦笑しただけなんですが(あれ? やっぱり馬鹿にしてる?)、バカにされたと思ってちょっぴり傷つく新入生。

 だいぶ学校になじんできた頃、友達とカラオケで盛り上がって帰りが遅くなったある日(前フリ長い)、日吉先輩がなにやら息せき切って走るところを目撃します。なにやら尋常じゃないその様子に興味を引かれて、新入生、友人達に別れを告げて、日吉を呼び止めました。日吉は苛立った様子で新入生を一瞥すると、今は忙しいとだけ言ってそのまま走り去ろうとしました。

 いったいなんなのかと新入生がいぶかしがっていると、空になにやら変則的な動きをして飛び回る光り輝く物体が。

「日吉先輩……あれ」

 呆気にとられながらその物体を指差すと、普段クールな日吉はやけに興奮した様子で、

「お前にも見えたか!?」

 なんて聞いてきます。とりあえず頷きながらもそれを目で追う新入生。そして日吉。あれは一体なんなのかと日吉に聞こうと思い、口を開きかけたところで、その光り輝く謎の物体は、突然消えてしまいました。

「あ!」

 日吉らしからぬ声です。その後、日吉はクソッ、と呟きます。「取り逃がしちまったか」

 事情がよく飲み込めていない新入生は、あれはなんです、とか、なにをしてたんです、と言ったことを矢継ぎ早に日吉に問いかけます。日吉は小さくため息を漏らすと、「あれはUFOだ。そして俺はUFOを追いかけてきた」とか言い出します。

 新入生は、日吉はもっと現実主義的な人だと勝手に思い込んでいたので、UFOを必死で追いかけてきた日吉というものがどうもしっくりきません。かといって、自分もいまの変てこな物体を見てしまったので笑い飛ばすわけにもいかず、リアクションに困ってしまいます。

「あれを……写真に収められたら、大スクープですね」

 あれこれ考えて出てきた言葉はそんな感じでした。――日吉は少し驚いた顔をした後、満足げに頷きます。

「人間てのは、自分の目で見たとしても、理解の範疇を超えた出来事に対しては懐疑的になるもんだぜ……。それなのに、お前UFOを信じるんだな」
「信じるもなにも、現にこの目で見ちゃいましたし」
「そうか」

 そう言ってニヤリと笑う日吉の顔は、どこか嬉しそうでした。

 それから新入生は、日吉から超自然的な現象の話、学校の怪談、UFOにまつわる古今東西のありとあらゆる話を聞かせてもらえるようになります。夏には二人で怪談特集の陣頭指揮を取るという計画に組み込まれてしまいました。

 中学生にもなると、まともに超自然現象についての話をする人間なんていうものは減ってくるわけで、日吉は同志が増えたとお喜びのご様子です。新入生もまた、日吉はなにやら怖げというか、感じ悪いというか、最初はあまり良い印象をもっていなかったのですが、一緒に仕事をするうちに段々その人柄(?)に惹かれていくわけです。

 そうこうしているうちにあっという間に夏が来て、怪談特集をするために近隣の心霊スポットを二人で回るようになります。都内にはたくさん心霊スポットがあるのです。ネタには事欠きません。こうして集めた怪談は生徒達から大好評でした。遠くの心霊スポットの話をポンと載せるよりも、身近なところにある恐怖をクローズアップしたのが受けたようです。達成感を感じるとともに、一大イベントを共に成し遂げた二人の仲も、ちょっと前進します。

 そして夏休み、新入生と日吉は日帰りでお出かけする約束をします。もちろん、日吉の部活の大会が終わった後ですが。

 場所は東京から新幹線で1時間程度ということで、長野県の軽井沢にでもしておきましょうか。軽井沢で美味しい物を食べたり、心霊スポット(軽井沢大橋※1)を訪れたりする楽しいといえば楽しい、そんな小旅行です。

 いくら涼しいといっても、夏は例外なく軽井沢も暑いので、二人は、はちみつゆずジュース飲んだり、ミカドコーヒーのモカソフトぺろぺろしたりして涼を取りながら、旧軽井沢の辺りをふらふらするわけです。トリックアート美術館を楽しんだり、レンタサイクルなんかしちゃったりしてな! ほんで、ショーの礼拝堂とか行くのです。ワオ、青春じゃねえの。

**(*´∀`*)~青・い・春~(*´∀`*)~**

 ↑心象風景。

 そんなこんなで夕方になりました。店が閉まり始め、町から人が消えていきます。これから心霊スポットへ行くのかと意気込む新入生に、日吉は早く帰るぞと告げます。先輩心霊スポットにはまだ行ってないじゃないですかと不思議がる新入生の手を引っ張って、帰りの新幹線に乗る日吉。

 席に着いた後で、軽井沢大橋は軽井沢からはとても歩いていける距離じゃねえよ(※2)なんていいだすので、ますます新入生は不思議がるのです。しかし、あまり深く物を考えないタイプ(ということにしておきましょう)なので、そういうことならと納得します。

 そのうち、歩き回った疲れも手伝って眠たくなってくる新入生。大あくびをしていると、着いたら起こしてやるから、寝てて良いとか言われます。で、言われた通り爆睡する新入生。あどけない寝顔を見ながら、日吉はちょっとだけ優しく微笑むのでした。

※1軽井沢大橋……軽井沢で有名な心霊スポット。軽井沢大橋という名前なのに別に大きくないと定評がある。また、最寄り駅が軽井沢駅ではないなど、紛らわしい橋である。

※2歩いていけない距離……軽井沢駅から徒歩だと2時間以上を要します。が、最寄の駅からだと、徒歩での所要時間は1時間程。
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